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古典芸能として残すべきレストラン接客業とは。10店舗を渡り歩いたフリーランスサービスマン阿部孔亮に聞く。

2022.04.13

「レストランの接客ってもはや古典芸能だと思っていて」

そう話すのは、サービスソムリエでありながら、FILIPPOの若手マネージャーの育成までも行う阿部孔亮さん(48)。

ファミレスやレストランでもAIやロボットが導入され、人がお店に立つシーンが減ってきている現代ー。

良質なレストランサービスの文化もだんだん廃れていくと思うんだけど、そういう文化を無くしちゃうのも勿体無いし、寂しいですよね

会社に所属せず、フリーで活動する阿部さんは、20年間国内10店舗以上のさまざまな形態のレストランでサービスを務めあげる。

プロとしての実力と、誰からも愛される高いコミュニケーション能力を兼ね備えた彼に、レストランサービスの極意について語ってもらった。

■アーリオオーリオ・ペペロンチーノに惹かれて

ーどのような経緯で、レストラン・サービスへの道に進むことになったのですか?

世の中にイタリアンなんて知られていなかった1990年代。

「チューボーですよ!」という番組でアーリオオーリオ・ペペロンチーノを見たことがきっかけで料理の面白さに気づき、仙台のイタリアンレストランで働き始めました。

その後も料理の道に進もうと思い、イタリアに1ヶ月行き、戻ってきてそのまま東京の調理師学校に入りました。
学校で料理の勉強はしたのですが、当時めちゃくちゃコミ障で、人と喋れなかったんです。笑

このままだと自分でお店をできないと思い、サービス力を身につけるために、調理師学校に通うかたわら、飲食のアルバイトを始めました。

そこはもうめちゃめちゃ厳しくて。
文字通りボコボコ。グーパンチが飛んでくるような男の世界でした。

ー若くして厳しい職場を経験したのですね。卒業後はどのようなお店で働いたのですか?

調理師学校卒業後は六本木のリストランテに就職しました。
最初の1年間はオーダーすら取らせてもらえないし、プレートを運ぶだけ。
お客様と話すことも許されないような格式高いレストランでサービスを1から学びました。

その後は、周りから「働かないか?」と声をかけられることが多くなり、20年間で10店舗以上のレストランを渡り歩きました。

阿部孔亮は、尊敬する諸葛亮孔明が由来だという

■シェフとお客様双方に提案するサービス力

ーレストランのサービスってすごく奥が深いのだと感じます。プロのサービスって、どんな仕事なのでしょうか。

究極で言うと、お客様から「全部お任せで」と言われた時にお客様とシェフ双方に料理の提案ができるかどうか。
その提案力がプロに問われる力だと思います。

常連さんの好みも知っていて、前回何を注文されたかもわかっていて、その上でキッチンとコミュニケーションをとり「こういう料理を作って」とシェフに提案する。
そのためには、キッチンとの信頼関係も必要で、コミュニケーション能力も高くないといけないわけです。

ーお客様とのコミュニケーションだけではなく、キッチンとのコミュニケーションも大事なのですね

普段からキッチンとコミュニケーションをとっていないと、いざという時にオーダーをしても「そんなの無理だよ!」と言われてしまいます。
例えば「今日キャビアの料理を作って」と提案しても、「キャビアねーよ」って怒られちゃうからね。

自分の中でも料理や食材の知識がないといけないし、お店の在庫に何があるかを把握することも大事。

ワインに関しても、イタリアンだからイタリアワインを知っているだけではダメで、「普段こういうフランスワインを飲みます」というお客様に対してどんなイタリアンワインを提案するかとか。

サービスの奥深さって言うのは、全てを知っていなければいけない。オペレーションも含めて全てを理解した上で最善をとっていくことなんです。

だから、お客様に任せられたら、全て自分でプロデュースできますよ、というのが究極のサービスなのだと思います。

■五感を使って。見るではなくて、観る。聞くではなく聴く。

ー阿部さんはサービスソムリエだけでなく、店舗マネジメントの経験とスキルもお持ちで、どこででも生きていける力強さを感じます。今FILIPPOではどのようなことを意識して働いているのですか?

FILIPPOでは連日多くのお客様が来てくださいますが、街中から外れたお店の場合、どのようにして人を呼ぶかを真剣に考えなきゃいけないし、1組来たらそのお客様を絶対に逃さないようにしないといけません。

そのためには、店にあるあらゆるものをツールにしてお客様を繋ぎ止めるやり方だったり、飾っている小物をネタにして笑わせたりするアドリブ力だったり、遠くのテーブルで「お誕生日おめでとう!」と乾杯をしている声を聞き逃さずキッチンに誕生日プレートを書いてもらうようお願いしたり。

五感をフルに使って、香る、感じる、観る、聴くをやっていくので、すごく疲れます。笑 
頭も常にフル回転させる必要がありますしね。

自分のFILIPPOでのミッションは、自分がやるのではなく、次期マネージャーになるスタッフにこうしたサービスやお店を回すためのイロハを伝え、やってもらうように育てることです。

熱々のマルゲリータSTG

■FILIPPOで働く魅力とは

ー働くという観点でみた時に、FILIPPOはどんな職場ですか?

FILIPPOは素晴らしい職場だと思います。まず、ここの人たちは誰一人としてお客様の悪口を言わないんです。

そして、サービスを学ぶというよりも、経営センスを磨ける職場かな。
オーナーの岩澤さんは「経営とはどういうことか」を口を酸っぱくして話すので、経営に関してのことや、将来お店をやる、飲食に限らず自分で何かをやる人にとっては、すごく役に立つと思います。

ただ、スタッフ全員に手取り足取り「経営とはこう言うものだよ」と教えるわけではないので、毎日の営業の朝礼や日々のやりとりの中で、その話の本質に気づけることが大事ですね。
自分の中で噛み砕いて理解してもらうことができれば、いいのかな。

あとはFILIPPOでは人とのつながりを大事にするので、生産者さんや他の業界の人とのつながりを作れる職場。
生産者さんとのつながりって言うと逆に今みんな言ってるから安っぽく聞こえちゃうけどね、ここに関しては本当に強いですよ。

■古典芸能として残すべきレストランサービス

ー阿部さんは、サービスを学びに、昔はよくディズニーランドに行っていたとか。

ディズニーランドはサービスを学ぶには最高の場所でしたね。
写真を撮るにしても、上手に撮ってくれるし、何より提案力「〜しましょうか?」の幅が広い。
「できません」はなるべく言わない。
そこって結構大事で。

難しいオーダーでも、自分のアイディアでやってみることができるお店は良いと思います。

ただ、そこに注力してほかのことを疎かにしてしまうのも良くないので、もちろんできないものはできないと言うことも大事。

ピッツェリアでカレーを作ることは不可能なので、できるできないの棲み分けの判断もできるようにならなきゃいけませんね。

ーレストランでこれから働く人たちに伝えたいことはありますか?

レストランサービスって古典芸能だと思っていて、こうした文化は小さくても残していきたいです。

家の大画面で映画が見れるようになったから映画館に行かないわけではなくて、やっぱりみんな映画館には行きたいし、ディズニーランドの体験を求めにわざわざ足を運ぶ。

行かなければ味わえないレストランでの素晴らしい体験を提供し続けるためにも、サービスを古典芸能として残さなきゃいけないのだと思っています。

■番外編ー岩澤正和オーナーからのメッセージ

阿部さんは自分の理想の居場所を一生探し続けるのだと思います。

彼の居場所の一つに選ばれるくらい、うちの店(FILIPPO)が「良いサービスマンとは何か」という学びと発信の場になれれば良いと考えていて。

当店(FILIPPO)は若手のスタッフ中心でビシバシ回しているので、サービスの力がどうしてもお客さまのペースに間に合っていない時もあるんです。

本当は一人のんびり淡々と自分のリズムでお客様と接客したいと思っている阿部さんですが、いつも若手に目線を合わせてくれてるので、その分ストレス抱えているかもしれないなと思っています。

でもね、実はすごくぶきっちょな方で。笑

良い接客をできるようになるには、間違いなく他の人より努力が必要だった。
そんな彼が、いろいろな環境での経験を通じて接客も食材やワインやマネジメントの知識までも身につけているので、教え方も幅が広いし、腑に落ちるのです。
これまでの経験を言葉だけでなく、いつも行動に起こしていて、礼節は勿論、雑用まで率先して若手に見せてくれている鏡のようなプロフェッショナル。

自由人なので役職を背負うことから距離をとっているようですが。笑
人がついてくるので、腹を括ってしまえば良い経営者になって結果もついてくるでしょう。

この国のおもてなしの高さを維持するには、接客業従事者の価値を高めることだと世の中に理解してもらうことが必要です
阿部さんにはもっと遠慮せず、思い通りにやってほしい。
そうしたら彼にとってもっと楽しい環境が作れるはずだから。

■編集後記

「周りがつまらなくしている雰囲気が嫌」

そう語る阿部さんは「サービスも、シェフも、さらに言えばお客様も対等というのが、自分にとっても、一番居心地が良いのだと思います」という。
営業中だけでなく、仕込みの時間も、阿部さんがかける何気ない一言で、テーブルやキッチン、レストラン全体が和む。

カジュアルでありながら心地よい距離感でお客様を楽しませ、キッチンを盛り上げ、みんなにとって居心地のよいレストランが完成する。

これからも彼はサービスのプロとして日本各地のレストランを渡り歩くのだろう。

ライター/井上美羽

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