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バイク屋からレストランマネージャーへ。マルチ職人、牧野真の裏側

2024.01.05

現在本店FILIPPOのマネージャーを務める牧野真(呼称まきしん(45))。ワインアンバサダーも務め、幅広い知識と交友関係を持つ彼は、およそ10年前から岩澤の夢に共鳴し、岩澤の右腕として、陰で店を支え続けている。サービスマンとして料理以外の全てを管理し、お店の売上をあげるための知識と経験をも持つ彼は、任されたポジションで自分の力を上手に発揮できるオールラウンダーだ。今回は、サービスマンとしてのまきしんが出来上がった、その成り立ちを聞いた。

25歳でバイク屋さんから料理人に転身

ー飲食の世界に入った背景を教えてください

釣りも、バイクも、車も好きで、大学卒業後は新卒で練馬区のオートバイ用品店に就職しました。特にレースが大好きでエンジンはチューンナップすればするほどパワーが上がって速くなる世界だけど、当時は年々排ガス規制が厳しくなり、環境を考えれば考えるほどパワーダウンをしてつまらなくなってしまいました。当時、僕は店で1ヶ月800万の売上を出していたけど、これも全て終わるんだなと僕の中でもうバイク業界は尻窄みの状況だと思いました。次、手に職をつけようと考えたときに、自分は料理をやりたかったことを思い出して、2004年に大阪の辻調理師専門学校に入学して一から料理を学ぶことに。

うちの親も食にはすごい興味があったから、小さい頃からいろんなところに連れてってもらっていました。初めて外で食べたイタリア料理は今でも覚えていて、母親と行った商業施設のレストランフロアの一角にあったイタリアレストランで食べたペスカトーレ。ムール貝を初めて見て、何これ?と美味しくて衝撃を受けました。

専門学校に入って一番楽しかったのは中華料理。でかい中華包丁1本と丸太みたいなまな板と中華鍋、全部1個でやるでしょう。面白いですよね。そのあとパティシエの道に進みたいと思って、パティシエの授業を受講してシュークリームを作ったり、ショートケーキを作ったり。

自分で何か作る、構築するっていうのが大好きで。当時はとにかく何でもやりたいんだけど、自分がまだ何になりたいかっていう部分がわからなかったんです。最終的に、イタリア料理ってめっちゃシンプルじゃない。そして頭の中に小学校の時に母親と食べたペスカトーレがよぎり、最終的にはイタリア料理に進むことに決めました。

ー東京に戻ってきて、いきなり高級イタリアンレストランに就職しましたね。最初はどのようなスタートだったのですか?

26歳なのに、額面で18万ぐらいからスタートなわけですよ。もちろん最初から厨房には入れなくて、でも自分の給料が欲しいから、一生懸命ホールのことを学んで、いろんなところを任せてもらえるようになって。途中で自分の給料と自分の仕事量が納得いかないと言えるくらいまでやりましたね。

ーもともと料理をやろうとしていたのに、サービスをつづけたのはなぜですか?

サービスが楽しかったからかな。自分のサーブによってお客様が喜んでくれるのが一番目に見えるし、手応えもありました。当時はSNSはないのでメールアドレスで連絡先を教えてもらって、常に連絡取ってイベントの招待をしたり、正月や暑中見舞いもメールで挨拶したり、自腹で20万のパソコン買ってIllustratorとPhotoshopも独学で勉強してイラストを作ったり、大学の写真部の時に買ったカメラで写真を撮って加工して、店や自分のブログに写真載っけてみたり。

Illustratorを使いこなせるようになったら、店内のテーブルや椅子、壁も全部そのまま縮小して作れば予約帳をみてテーブル配置をどうすれば良いかが一目でわかるようになるんです。そういう細かい作業が、個人的には大好きでした。

ーレストランで経験を積みながら、サービスとして、またマネージャーとしてのスキルや知識を体得していったのですね。ワインスペシャリストとしてのスキルを上げるためにどのようなことを行ったのですか?

自分は白ワインしか飲めなかったんだけど、レストランのホールではお酒を売らなきゃいけないんですね。一番最初に就職したお店は高級店だから、お店のワインリストの中には1万2000円〜4万8000円。そんなの自分は飲んだこともないし、わからない。だからまず自分が美味しいと思ったものから売っていこうと思って、「ワインあんまりわかんないんですけど、とにかく美味しいと思ったんでとりあえず飲んでください」と言いながら最初は白のピノ グリージョっていう品種だけを売っていました。

バイク屋さんでバイクを売っていた時も、信用を繋げるために、自分で身銭を切って自分のバイクで実際にやってみて、そこで信用を得てリピートしてもらったから、同じことをワインでもやっていたかな。飲んだことないものは売らずに、自分が体験してるものだけを勧める。これを4年間続けていくと、ワインとしてもスキルが上がって、幅も広がっていきました。

そして、ワインの師でもある故内藤和夫氏やアブルッツォ州のワイナリー、マシャレッリの影響が自分には大きかったと思っています。

最初はワインは仕事と捉えてやってたけど、今は生活の一部というか、休みの日でも仕事をしていなくても頭の中ではワインのことを考えています。

FILIPPOでの使命

ーこの会社に入社するまでの背景を教えてください

2011年の東日本大震災の時に僕が働いていたアミーチというお店に岩澤がヘルプにきてくれて、1ヶ月くらい一緒に働いていました。彼とは年齢も近くすぐに意気投合して、ゆくゆくは一緒に店やれたらいいよねみたいな話はしていて。FILIPPOの本店がオープンし約2年後の2015年のタイミングでこの店に入社しました。

ー現在はマネージャーとして店舗全体管理をしながら、サービスマンとしてお酒を販売し、マルチタスクをこなしているまきしん。今のポジションを全うするにあたって意識していることはありますか?

うちで働きたいと言って来てくれたスタッフを伸ばしてあげたいと思います。ある意味僕らはもう年齢的に教育者のフェーズに入ってるので、下の子を伸ばすのが僕の使命なのかな。できる人間を求めていなくて、働く中でやっていきたいという気持ちが芽生えてくれればいい。この店は学校ではないけど、ここにきたからには、自分で勉強しなきゃと思ってほしいです。

昔は「やる気なかったらやめればいいじゃん」っていう考えだったけど、今は10年前の自分のスタンスとはかなり変わっていて、若い子の未来を作るのが大前提。育ちたいと思っていない人間を育てる指導者になるのは結構難しいけど、やる気がない子も育てていかないといけない現状もあるし、これからもそれがずっと続いてくと、自分の中では覚悟を持っています。

最前線でやっているスタッフには、お客様が気持ちよくいてくれれば会社が潤って、自分たちも幸せになれるっていう判断軸でいてほしい。でも、今の自分の立ち位置としては表に出ない動き方をしていて、自分がお客さまのことを全部見れるわけではないので、お客さまを判断軸にはしません。もちろんお客さまが第1優先ということは変わらないんだけども、スタッフが気持ちよく働くことができれば、それがお客さまに電波するっていう考えかな。社長はお客さまが喜んでスタッフが喜んで会社が喜ぶ。思いはみんな一緒だけど、それぞれのポジションでみているところは少しずつ違いますね。

僕の夢よりも、岩澤の夢が壮大すぎて

僕は入社してもう丸々10年になります。自分がここにいる理由は、僕の夢よりも岩澤の夢。「全員経営者になって、みんな自分の事業を持ちながら、本店で自分のお小遣いを稼ぐ」という夢を8年前から語っていて、その考えに個人的に賛同しています。壮大だけど、実現できたら、夢あるじゃん。

「ここで働くみんなが全員経営者」は、夢物語かもしれない。でもそういうお店やそういう人が増えていけば、本店にも新しいスタッフを入れることができるし、ちょっと面白い未来が見えてくるんじゃないかな。

まずは責任を持って1店舗1人で見て、同じ会社の中でFILIPPO本店を守りながら、本店の外をどうしていくかを考えていくことができたら、最高ですね。

オーナー岩澤正和より

まきしんは、Gtaliaの歴史とイタリア料理業界の変化をしっかり把握してくれているので安心して事業を任せられる人材です。お客さまの事は会社で1番考えてくれていて、自分に文句一つ言わず事業を追いかける事に付き合ってくれて、悩みながらも舵を切ってくれて。でもその反動でいつも自分の未熟な部分を抑えているんだと思います。

事業は拡張エネルギー、経営はバランスのエネルギーが必要です。事業家は人格を問われないですが、経営者には人格が凄く重要です。そのバランスがまきしんの課題なんだよね。

未熟な部分が隠せなくて、折角成長しようとしてる部下が離れてしまったこともあって、勿体なかったよね。でも仲間たちは今まきしんが変わろうとしている、変わってきていることにちゃんと気づいています。皆がまきしんに求めている高い人格者として成功の道標を示してくれたら。

彼は、恐らく顔には出さないけれど、不安や新たな葛藤が毎日あるよね。そんな中踏ん張ってくれて本当にありがとう。これからは自分の弱いところを無理せずチームに振ってみて。そして弱いところや悩みを若手に見せずに自分に見せてみて。そうすればまきしんを追いかけてくる若者が出てきます。

あともう一つ。お客さんはね、勿論まきしんのサービスは嬉しいけれど、その場限りのサービスを本心で喜んでいる人は少なくて、彼がいなくてもそれ以上のサービスをしてくれる、未来の卵達に投資してくれて楽しんでくれています。今も楽しみたいけど未来に続く事を心の底から望んでいるということを理解してください。

その人が居なきゃできない特別サービスは、逆にお客さまを悲しませる事のスタートです。
自分しかできない特別サービスを若手の卵たちに周りに波及させて、それ以上の特別サービスを準備しないとね。適正な判断をした上で、付加価値をつけていかないと。

GDPを上げることが目的だった時代から生きる意味を問う時代に変化しています。Gitaliaの仲間は、その時代の変化を背伸びして理解しようとしてくれて、対応しようとしていて、ようやく結果もついてきています。

彼らを疑う時間が勿体ない位まっすぐな信用できるチームで、自分も少し背伸びしてるけど、皆んな最高のメンバーだよね。

2024年。小さな目標を達成できるリズムで動いています。さあここから新時代のレールを一緒に引きましょう。よろしくお願いします。未来に乞うご期待です。
ー社長・岩澤正和

取材・撮影・執筆/井上美羽

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▷▶︎pizzaiwasawa@yahoo.co.jp (岩澤正和)

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