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今、僕たちが取り組んでいること

2026.06.05

〜インパクト・レポートを作った理由〜

おいしい!と、最近思わず口にしたことはありますか。

人がおいしい、と思う時、理屈では説明がつかないからだの中から湧き上がる感覚、どなたでも感じたことがあることでしょう。問答無用においしい!と思って食事をすること、夢中で食べること、幸せな気持ちが込み上げ、誰かに伝えたくなり、食べ終わるのが惜しいほど、この食事に出会えたことに感謝が込み上げてくるような。そんな食事を、最近しましたか?

実は、おいしいを形作る要素はたくさんあるんです。料理が運ばれ、熱々の皿からは湯気がたちのぼり、あたりが良い香りで満たされ、メニューと食材の説明がシンプルに、だけど熱っぽく語られ、さあどうぞ召し上がれと軽やかな号令と共に、食事が始まる。みずみずしい野菜、旨みの深い肉、香り立つ小麦、パリッとした食感、歯応えも、驚きも、あとを引くおいしさも、余韻となって記憶に残る。

そこには、理屈に裏打ちされた「おいしい」理由がちゃんと存在すると、僕たちは考えています。1枚のピッツァの上に載っている食材、トマト、季節の菜花、根菜類、ソーセージやハム類、ソースやクリーム、胡椒やオリーブオイル。この一つひとつを目の前に想像した時、それを365日毎日作り続けている人たちのことを、思い出します。彼らの手によって育てられた食物の、真っ直ぐな味。これは、栽培された環境と栽培する人の気持ちと行動が成し得ることのできた、産物なんですよね。一体何人の生産者さんが、この1枚のピッツァに関わっているでしょう。

その昔、動物は植物を食べ、植物は動物や昆虫の助けを借りて、その種を生み、移動を委ねてその生存圏を拡大していきました。そして私たち人類は、植物や動物を育て、栽培し、食すことでその生存圏を拡大していきました。このイメージ。僕たちはいつも思い出すようにしています。

1人の生産者さんが毎朝、畑に出て散水し、手入れをし、収穫し出荷する営みの足元には、大地があり、その根底には水脈、その先には生態系に繋がっている。僕たちが産物を選び取ることで、その循環は巡り続けることができます。忘れてしまいがちな大きな生存圏の循環の中に、僕たち一人ひとりが存在しているということ。このイメージ、毎日頭に浮かびます。

都市と地方は、その意味で密接に繋がっている。

長年厨房に立ち、ピッツァを焼き続けているうちに気がつきました。僕たちの食の営みは、地方の循環の一部になっているということ。豊かさは双方の働きがあって成り立つということ。

一昨年僕たちは、日々使う食材が一体どれだけの影響を、環境に対して及ぼしているのか、調べて「インパクト・レポート」にまとめました。生産者さん、流通業者さん、店舗の維持に関わる我々スタッフは、どれだけのエネルギーをかけ、環境や地域に影響を及ぼしているのか。しっかりと見つめる必要があると思ったからです。

さらにもう一つの目的は、自己認識でした。僕たちスタッフ一人ひとりが、どれだけしっかり自覚できるか。このレポートを作ると決め、まずはスタッフ全員に、それぞれが大切に思っていることを書き出してもらいました。そこには、それぞれの視点があり、日常のささやかな意識があり、どれも大切なこと。なんとなくわかっているけど、見えない価値がどれだけあるのか、書き出すことで可視化したかったんです。お客さまに伝えていくことと同時に、スタッフ皆の意識も高めてほしかった。それを僕が一つの形にまとめて行ったものが、このレポートです。

そのことから見えてきたことは、働き手も、消費者も、生産者も、同じ大地の上に立っているということ。ピッツァ1枚に対しての繋がりある15の生産者さんは、続けていく大変さに直面しています。2050年には今と同じ質の生産ができなくなるという予測もあります。それは、愚直に栽培に取り組むことは、費用がかかり、手間や人手がかかることだからです。必要以上の薬や肥料を使わないことは、それだけ人間の仕事が増えるということ。効率や経済効果を求めすぎないということは、技術や知識が必要で時間や労力も必要だということ。でも、そこに努力をいとわない、気骨のある生産者さんに出会うと、僕たちは、応援したくなります。応援は、「購入する」ことで、できることだと考えています。

そして、「おいしい」!と叫び出したいほと、見事な農産物に出会うことができます。元気で、エネルギーに満ちたそれらの食材は、食べる人を根本から元気にし、心も身体にもまさに「効いている」感覚があります。私たち料理人から見たら、一目瞭然なんです。おいしい、には理由がある。僕たち自身が気持ちよく料理できることも、大切な要素だと思います。

あなたの日々の食卓まで

日々、自分の家のキッチンで料理をする時にどんな食材を選ぶべきか。立ち止まって選び取るのは、難しいし、そんな時間がないと慌ただしい声が聞こえてきそうです。でも、大きな循環の中にいることに気がつけたら、日々の食卓まで変化するかも?そうしたら、レストランに来る日だけじゃなくて、365日、おいしくて幸せな食卓を味わうことができる。難しい料理のレシピより、信頼できる生産者が作った食材と、調味料があれば、食卓は豊かなものになると思っています。

街のレストラン、だけどどうしてここまでやるの?と良く尋ねられます。さまざまな人が訪ねてくれる場所だからでしょうか?衝動に従って動いています。

僕たちは、東北、熊本、能登などの被災地支援でたびたび現地へ赴き、食事の提供に協力をしてきました。その度に「食べ物」が希望になるという瞬間を見てきました。おいしいと心から思った時、人は、静かな希望が胸に宿る。その数が増えていくにはどうしたらいいだろう、被災地支援を体験するたびに、食が持つ根源的な力を感じずにはいられません。僕たちは、食べることで生きているということ。

最初の質問に戻りますが、「おいしい」と思う体験を最近したのはいつですか?僕たちは、そのインパクトが、最大の原動力になり得ると思っています。僕たちが住んでいる地球環境と、ちょうど良い共存の仕方を模索したい。それは、野生の状態に戻すことではなく、自然に敬意を持ち共に在ること。それができるメニューは何だろう?食材はなんだろう?それを作っているのは誰だろう?そう思って日々、料理を作っています。

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